徳島県の系統用蓄電池事業はなぜ注目されるのか?主要プロジェクトと参入方法を解説

系統用蓄電池

徳島県の系統用蓄電池事業が注目されているとする画像。主要プロジェクトと参入方法に関する情報がテキストで表示されており、背景には徳島の阿波踊りが映る。


徳島県の系統用蓄電池事業が急速に拡大している理由とは

徳島県では系統用蓄電池の導入が急速に進んでおり、2025年には複数の大規模プロジェクトが稼働予定です。グリーンエナジー&カンパニーによる県内初の系統用蓄電所建設、ワイヤーエナジーグループの50MW規模開発計画、そして県が策定した「徳島バッテリーバレイ構想」など、徳島県の系統用蓄電池事業が急速に発展しています

再生可能エネルギーの安定供給と脱炭素社会実現に向けて、徳島県が全国のモデルケースとなる可能性が高まっている現状について、主要プロジェクトの詳細から事業参入の方法まで、最新情報を網羅的に解説します。


■この記事で分かること■


徳島県における系統用蓄電池事業の全体像と市場動向

系統用蓄電池の基本的な仕組みと電力系統での役割

系統用蓄電池は、送電網に直接接続して電力の需給バランスを調整する大容量蓄電システムです。昼間に太陽光発電で余った電力を蓄電し、夜間や電力不足時に放電することで、再生可能エネルギーの安定供給を実現します。

従来は需要量を超えた再生可能エネルギーは廃棄せざるを得ませんでしたが、2030年には最大約15GWもの電力余剰が予想されており、この課題解決の切り札として期待されています。事業者にとっては、電気が安い時に買い(蓄電)、高い時に売る(放電)ことで、その価格差を利益とする新たなビジネスモデルが確立されています。

徳島県が注目される理由と地域特性

徳島県は蓄電池製造業の製造品出荷額が全国トップクラスに位置し、蓄電池材料メーカーや製造メーカーが集積する地域的優位性を持っています。

県内には再生可能エネルギー事業で実績を積んだワイヤーエナジーやグリーンエナジー&カンパニーなどの地元企業が存在し、適地確保から系統枠取得までのノウハウが蓄積されています

2025年の市場規模と将来性予測

2025年には徳島県内で複数の系統用蓄電池プロジェクトが本格稼働する予定で、総容量は50MW(200MWh)を超える規模に達します。グリーンエナジー&カンパニーの8MWh級プロジェクトが先行し、ワイヤーエナジーグループは25施設分の大規模開発を計画しています。

蓄電池市場全体では2050年に約100兆円規模への拡大が見込まれており、徳島県は「徳島バッテリーバレイ構想」により2030年までに製造品出荷額を現在の1,603億円から3,000億円への倍増を目指しています。脱炭素社会の実現に向けて、系統用蓄電池は電力インフラの中核的役割を担う成長産業として位置付けられています。

徳島県の主要系統用蓄電池プロジェクト完全ガイド

グリーンエナジー&カンパニーの川内町プロジェクト

項目 川内町プロジェクト 吉野川市プロジェクト
容量 8,250kWh(3基) 8MWh
出力 2MW
世帯数換算 約825世帯分
特徴 徳島県初の系統用蓄電所 一括受注サービス

株式会社グリーンエナジー&カンパニー(証券コード:1436)は、徳島市川内町加賀須野で「徳島川内グリーンバッテリーチャージャー(仮称)」を建設中です。四国での接続申請は2例目、徳島県では初となる系統用蓄電所で、一般家庭約825世帯分の一日使用量に相当する8,250kWhの電力貯蔵能力を持つ蓄電池3基を設置予定です

同社の孫会社であるグリーンエナジー・ネックスが吉野川市で8MWh容量の系統用蓄電池システムの一括受注契約も締結しており、蓄電池の調達から設計、設置、保守管理まで一貫したサービスを提供しています。上場企業としての信頼性と豊富な資金力を持ち、徳島県の系統用蓄電池市場をリードする存在です。

ワイヤーエナジーグループの大規模開発計画

株式会社ワイヤーエナジー(本社:徳島市)とグループ会社のエナジーコンシェルジュは、四国電力管内で系統枠を確保した適地を複数組成し、2025年3月末までに50MW(200MWh)規模の蓄電設備開発を計画しています。総容量は25施設分に相当し、1施設あたり2MW(AC)・6~8MWh(DC)のリチウムイオン電池(LFP)を設置予定です

太陽光発電事業で培ったデューデリジェンス機能を活かした適地取得と系統枠確保を強みとし、運用資産51億5,000万円の実績を持ちます。2025年8月には四国電力エリアの系統用蓄電所プロジェクト(2MW/8MWh)の土地・接続枠権利譲渡契約も締結しており、事業の拡大を加速させています。

その他注目プロジェクトと開発状況

ヒラソル電設株式会社(本社:東京都文京区)は事業パートナーと連携し、徳島県および石川県の2か所で用地確保を完了して系統用蓄電池の開発に着手しています。再生可能エネルギーの有効活用と地域電力の安定供給を目的として、関係各所と連携した開発を進めています。

建設開始予定は2025年2月頃から案件によって異なり、運転開始は2025年7月以降を予定する案件が多いです

徳島バッテリーバレイ構想と政策支援の詳細解説

構想の背景と2030年までの具体的目標

徳島県は2024年7月に「徳島バッテリーバレイ構想」を策定し、蓄電池関連産業を新たな産業の柱として確立する産業戦略を開始しました。2050年に約100兆円規模へと拡大する蓄電池市場において、全国トップクラスの蓄電池関連製造業が集積している地域的優位性を最大限活用することを目指しています。

2030年までの7か年を目標年次とし、製造品出荷額等を2022年の1,603億円から3,000億円への増加、従業員数を4,232人から5,000人への拡大という具体的なKPIを設定しています。脱炭素社会において成長が期待される蓄電池産業で、徳島県が全国をリードするポジションを確立する戦略です。

県の支援制度と優遇措置

徳島県は「徳島バッテリーバレイ構想推進会議」を設置し、戦略の具体化と構想実現に向けた積極的な施策を検討しています。蓄電池市場や取引状況の変動に応じてKPIの見直しも行う柔軟性を持った運用体制を構築しています

具体的な支援内容については今後の推進会議で詳細が決定される予定ですが、企業の競争力強化と新規参入促進に向けた包括的な支援策が期待されています。既存の製造業集積を活かしながら、系統用蓄電池などの新分野への展開を後押しする政策環境が整備されつつあります。

全国トップクラスの製造業集積の活用戦略

徳島県内には蓄電池材料メーカーや蓄電池製造メーカーが立地しており、蓄電池製造業の製造品出荷額は既に全国トップクラスの水準に達しています。

地域内での経済循環を促進し、雇用創出も期待されています

徳島県系統用蓄電池事業への参入方法と成功戦略

事業参入の基本ステップと必要な準備

系統用蓄電池事業への参入には、適地の確保、系統枠の取得、蓄電池の調達、設置工事、電力市場での運用など多くの専門知識が必要です。適地選定では土地の地盤条件、電力系統への接続容易性、地域住民との合意形成などを総合的に評価する必要があります。

系統枠の確保は四国電力送配電への申請が必要で、接続可能容量の範囲内での枠取得競争となります。蓄電池はリチウムイオン電池(LFP)が主流となっており、2MW(AC)・6~8MWh(DC)規模が一般的です。電力市場での運用には需給予測や価格変動への対応力が求められ、EMS(エネルギーマネジメントシステム)の導入が不可欠となります。

パートナー企業の募集状況と提携機会

ワイヤーエナジーグループは系統用蓄電池事業における開発パートナーとして、事業者、メーカー、小売電気事業者、アグリゲーターなど、準備済み適地を必要とする企業の募集を開始しています。計画から建設(EPC)、最適運用(EMS)、保守管理まで一貫したサービス体制を1年以内に構築予定で、シナジー効果が見込めるアライアンス企業を数社募集中です。

グリーンエナジー&カンパニーも系統用蓄電池一括受注サービスを提供しており、新規参入企業にとって技術的ハードルを下げる選択肢となっています。地元企業との提携により、適地確保や系統枠取得のノウハウを活用できるメリットがあります

投資・開発における注意点とリスク管理

系統用蓄電池事業では初期投資が大きく、資金計画が重要です。技術面では蓄電池の劣化による容量減少や保守費用の増加、自然災害による設備損傷リスクへの対策が求められます。

系統枠の確保は先着順となることが多く、適地選定の遅れは事業機会の逸失につながる可能性があります。環境影響評価や地域住民への説明責任も重要な要素で、丁寧な合意形成プロセスが必要です。事業パートナーとの契約条件や責任分担の明確化による、リスクの適切な分散が考えられます

徳島県系統用蓄電池市場の今後と展望

徳島県の系統用蓄電池市場は2025年に大きな転換点を迎えます。グリーンエナジー&カンパニーの県内初蓄電所、ワイヤーエナジーグループの50MW大規模開発、そして「徳島バッテリーバレイ構想」による産業政策の三位一体により、全国のモデルケースとなる可能性を秘めています。

再生可能エネルギーの安定供給と脱炭素社会実現に向けて、系統用蓄電池は不可欠なインフラとして成長を続けます。徳島県の地域特性を活かした戦略的アプローチは、今後の系統用蓄電池事業展開において重要な参考モデルとなるでしょう

2025/10/07徳島県の系統用蓄電池事業はなぜ注目されるのか?主要プロジェクトと参入方法を解説

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